アメリカとカナダに本部を置く動物保護団体「Polar Bears International」が制定。英語表記は「International Polar Bear Day」。
ホッキョクグマ(Polar bear)の絶滅の危機や彼らが直面している現状をより多くの人に知ってもらうことが目的。
地球温暖化のため北極圏の海氷は年々小さくなり、そこに暮らしているホッキョクグマも棲み家や餌を失いつつある。同団体では二酸化炭素の排出量を減らすなど地球規模での活動を呼びかけている。また、この日には大阪市の天王寺動物園などホッキョクグマに関するイベントを実施する施設も見られる。
ホッキョクグマについて
ホッキョクグマ(北極熊)は、クマ科クマ属に分類される食肉類である。北アメリカ大陸北部、ユーラシア大陸北部、北極圏に生息する。オスの大きい個体では体長250cm、体重600kgにもなるが、近年は地球温暖化の影響で小型化が進んでいる。
全身が白い体毛に覆われているように見えるため、シロクマ(白熊)とも呼ばれる。夏季は汚れや油脂の酸化などにより毛衣が黄がかる個体もいる。長い首や流線型で小さな頭は遊泳への適応結果とされ、何時間も氷海を泳ぐ事ができる。また、流氷に乗って長距離移動することもある。
ホッキョクグマは分岐分類学的にヒグマに極めて近い位置にある。雑食獣であるクマの中で最も肉食性が強い種であり、アザラシを主食とするほか、魚類、鳥類やその卵、イッカクやシロイルカなどの哺乳類、クジラなどの動物の死骸に加え、氷の溶ける季節にはコンブ、スゲ、イチゴなどの植物も食べる。
形態
体長オス:200 – 250 cm メス:180 – 200 cm 体重オス:400 – 600 kg(最大800 kg)メス:200 – 350 kg(妊娠時500 kg)。生息地によっても大きさに違いがあり、ロシアのチュクチ海に生息する個体群が最も大型化する傾向がある。近年は地球温暖化の影響で小型化が進んでおり、1984年から2009年までの25年間で、オスの平均体重が45 kg、メスの平均体重が31 kgも減少した。
他種のクマと比較すると頭部は小さいが、長い頸部を持つ。体は大きくても耳が小さいため体勢は寒冷地に適応している。吻端と足裏の肉球を除いた全身が体毛で被われている。夏季は日光などにより、毛衣が黄がかる個体もいる。前述の長い首や流線型で小さな頭は遊泳への適応結果とされ、何時間も氷海を泳ぐ事ができる。また流氷に乗って長距離移動することもある。クマの中では視力は良いほうである。
全身が白い体毛に覆われているように見えるため、シロクマ(白熊)とも呼ばれる。多くの哺乳類の体毛がたとえ白色であっても光を透過しないのに対し、ホッキョクグマの体毛は光を透過し、内部が空洞になった特殊な構造のために、散乱光によって白く輝いて見える。ホッキョクグマの透明の体毛は陽光の通過を妨げず奥にある皮膚にまで届き熱をもたらす。もたらされた熱はぶ厚い脂肪層と体毛に保護され、容易に失われることはない。それに加え体毛内の空洞も蓄熱の役割を果たすという巧みな保温機構を成立させている。体温が殆ど外に逃げないため、体から輻射される赤外線の量が非常に少ない。この特性から、赤外線カメラによる空中撮影の際は雪の反射光に遮られる為、ほぼその姿を捉えられないことが知られている。なお、動物園などに飼育されている個体の場合、体毛の空洞に汚れが入り込むことで黄色っぽく変色したり、ときには空洞内に藻が発生し緑みがかかった色になってしまうことがある。この状態を俗に「ミドリグマ」ともいう。
出産直後の幼獣は、体重0.6 kg。
分類
ホッキョクグマは分岐分類学的にヒグマに極めて近い位置にある。ホッキョクグマとヒグマは、氷期だった約15万2,000年前に共通の祖先から枝分かれした。そのため互いに交配し、生殖能力のある子孫を残せることが判明しており、野生下でも稀にこのような個体の存在が確認されている。このためヒグマとホッキョクグマの生殖的隔離は不完全となっている。昨今では温暖化の影響もあり、北上してきたヒグマと陸地に上がってきたホッキョクグマの生息域が重なり「ハイブリッド」と呼ばれるヒグマとホッキョクグマの交雑種が確認されている。ハイブリッドは体毛はホッキョクグマのように白いが、盛り上がった肩と土を掘るための湾曲した長い爪などヒグマの特徴を強く受け継いでいる。
2004年(平成16年)、アイスランドの地質学者が、ノルウェー・スバールバル諸島の地層からホッキョクグマのあご骨と犬歯を発見。ペンシルベニア州立大学などの欧米の研究チームは化石に残された遺伝子と、米アラスカ州に生息するホッキョクグマ2頭とヒグマ4頭の遺伝子を比較解析した。その結果、氷期だった約15万2000年前にヒグマとホッキョクグマの共通の祖先から枝分かれし、最後の間氷期が始まる直前の約13万4,000年前には現在のホッキョクグマに近い形で存在していたことが判明している。
気候変動の影響
現在、ホッキョクグマとヒグマの祖先のその後の環境について次のように推測されている。間氷期の始まる前の時期は寒く、15万年前は現在よりも9-10度気温が低く、間氷期が始まると温度が上昇し、間氷期の中で最も暖かかった約12万年前には、極地の気温は現在より3-5度高かった。その後温度は上下を繰り返しながら全体的に下がっていった。約1万年前に終わった氷期では8-10度低かったと推定されている。その後、温度は上昇し現在に至る。結果として約15万年前からホッキョクグマの祖先は温度の急激な変化を何度も乗り越えてきたことが判明している。このため、ホッキョクグマが地球温暖化に対してどこまで適応できるのか、関心が高まっている。しかし近年の研究では、北極圏における海氷の減少に伴い、比較的南方に棲む群から生息数の減少が観測されており、このまま地球温暖化が進行すると北極圏全体の個体が危機に晒されるだろうと警告されている。また南下したとしてもヒグマ等との競争に弱いと見られ、絶滅の危険性が指摘されている。村にまで集団南下した例がある。
絶滅の危惧
2020年7月20日、イギリスの科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジに「気候変動によりホッキョクグマが2100年までにほぼ絶滅する」とする論文が発表された。 論文によると、北極圏の温暖化による海氷の減少によりホッキョクグマが餌のアザラシを狩れる時間が減り、すでに悪循環に陥っている地域もある。体重が減ることによって、餌がない期間を生き残れる可能性が低くなるという。ホッキョクグマが絶滅の危機にあることは長く理解されてきたが、絶滅までの期間を特定した研究は当研究が初となる。
生態
流氷水域、海岸などに生息する。冬季には流氷の南下に伴い南へ、夏季には北へ移動する。1日あたり70 kmを移動することもあり、年あたり1,120 kmの距離を移動した例もある。地域によっては、夏季に風通しの良い場所に直射日光や外敵から逃れるための巣穴を作る。秋季には嵐や雪を避けるために、同様の巣穴を利用することもある。流氷の間を数時間にわたって泳ぐ。時速6.5 kmの速度で、約65 kmの距離を泳ぐことができる。
クマ科中で動物食傾向が強く、主にワモンアザラシやアゴヒゲアザラシを食べ、ズキンアザラシやタテゴトアザラシも食べる。ワモンアザラシは成体でも60kgほどでホッキョクグマより遥かに小さいが、主に狙うのは幼体である。アザラシだけでなく、より大型のセイウチに襲い掛かる映像も確認されている。ただしセイウチはホッキョクグマの倍の体躯(1000kg)と巨大な牙があり成体には返り討ちに遭う事もあり、70回襲って3回セイウチの幼体の死骸にありつける程度である。夏季には鳥類や魚類、植物質、海藻も食べる。アザラシを捕食する際は、優れた嗅覚で匂いを察知し、氷を掘って巣穴にいる個体を襲う、氷上にある呼吸用の穴や流氷の縁で待ち伏せる、氷上にいる個体に忍び寄るなどの方法を取る。学習能力は高い。
繁殖形態は胎生。3 – 6月に交尾を行う。受精卵の着床が遅延する期間も含めて、妊娠期間は195 – 265日。11-翌1月に1 – 4頭の幼獣を産む。幼獣は生後28か月は母親と一緒に行動する。生後5 – 6年で性成熟する。生後21年で繁殖を行ったメスもいる。寿命は25-30年。
500 kgの雄の個体の体重を維持するには1日に12,000キロカロリーを必要とし、これには1週間でアザラシ1頭の捕食を必要とする。
交尾相手のメスをめぐり、オス同士が争うこともある。ただし、この争いは相手の殺害が目的ではなく、威嚇を重視したものである。なお、仔の2頭に1頭は生後1年以内に死亡することが多く、この中にはホッキョクグマのオスの成獣に捕食される個体も多い。このため子グマをつれたメスはオスを大変に恐れ、警戒する。
生息地帯において銃を持った人間以外脅威となるものは殆ど存在しないが、ごく稀に水中活動中にシャチ(サカマタ)に襲われる例が確認されている。また、ニシオンデンザメの胃からホッキョクグマの骨が発見されたこともある。近年は海氷が激減したことにより、必然的に泳がなければいけない距離が長くなり、以前よりシャチやサメに襲われる危険性が高まっている。ホッキョクグマに限らず、大型の海生動物の減少には、シャチやサメによる捕食が拍車をかけているという指摘もある。
雪原の力士 ホッキョクグマ | ナショジオ
[NEWS] 餓死寸前のホッキョクグマ 温暖化のせいで生命の危機に