1869年(明治2年)のこの日、中国・四川省の民家で、伝道中のフランス人神父アルマン・ダヴィドが、白と黒の奇妙な熊の毛皮を見せられた。これが、西洋でパンダが知られるきっかけとなった。
ダヴィドはジャイアントパンダのレプリカ標本をパリの自然歴史博物館に送り、その1年後の1870年に、研究を進めたミレー・エドワードが、「Ailuropoda melanoleuca」(アイルロポダ・メラノレウカ)という学名を付けた。
学名の「Ailuropoda」は古代ギリシア語で「猫」+「足」の合成語。「melanoleuca」は同じくギリシア語で「黒白の」といった意味合いである。
パンダについて
パンダ(panda)は、ネコ目(食肉目)に属するジャイアントパンダ(クマ科)とレッサーパンダ(レッサーパンダ科)の2種に対する概念上の総称である。別名は「熊猫(くまねこ)」。両種とも中国大陸に生息しているという共通点がある。
「パンダ」の名前は、ネパール語で「竹」を意味する「ポンヤ(ponya)」から「竹を食べるもの」に由来する説がある。また、ネパール語で「(五指を含む)手のひら」を意味する「パンジャ(panja)」に由来するという説もある。
パンダの生態
標高1,200 – 4,100メートル(主に1,500 – 3,000メートル)にある、竹林に生息する。3.9 – 6.2平方キロメートルの、行動圏内で生活する。1日あたり500メートル以上を移動することはまれ。昼夜を問わずに活動するが、薄明薄暮性傾向が強い。冬季になると、積雪の少ない標高800メートルくらいの地域へ移動する。冬眠はしない。
食性の99 %を、タケ類やササ類の葉・幹・新芽(タケノコ)が占める。イチハス・クロッカス・リンドウなど他の植物質、ネズミ類・ナキウサギ類などの小型哺乳類、魚類などを食べた例もある。1日のうち55%(平均14時間)を採食に費やすが、消化器官が植物の消化に適していないため栄養摂取の効率が低いためとされる。消化率は約20%で、食後約12時間(タケノコでは約5時間)で排泄される。1日あたり10 – 18キログラム、水分の多いものだと38キログラムの食物を食べる。これは体重比にして、約45 %の量に達する。
3 – 5月に交尾を行う。洞窟や樹洞で出産する。1回に1 – 2頭の幼獣を産む。飼育下では3頭を産んだ例もある。出産間隔は隔年だが、幼獣が早期に死亡すると、翌年に出産することもある。生後40 – 60日で開眼する。授乳期間は8 – 9か月。生後5 – 6か月で、タケなどを食べるようになる。生後4 – 5年で、性成熟すると考えられている。飼育下での最長寿命は34年だが、通常は長くて26年。
食事
現在は竹林に棲み、竹食のほか、小型哺乳類・魚・昆虫等の小動物、果物を食べることもあり、他のクマ類と同様に肉食を含む雑食性の特徴も微少であるが残っている。氷期の到来による気候変動がもたらす食糧不足から偏食を余儀なくされ、常に入手しやすい竹ばかり食べるようになったと考えられている。しかしながら現在は、中国の飼育環境では、竹以外にも肉や野菜などを中心とした餌が与えられ、竹食中心とは言いがたいのが現状である。野生下でも、稀に人里に降りて家畜を食い殺す事件が発生するなど、機会があれば生肉を拒まない。
行動
群れや家族を形成せず、基本的に単独で行動している。他のクマ科動物と異なり、冬眠はしない。
繁殖
繁殖期は年に一度、3月から5月の間であり、マーキング(territorial marking)が行われることもある。メスの受胎が可能な期間は数日ほど。妊娠期間は3か月から6か月で、通常1頭または2頭の子供を出産する。繁殖力は低い部類に入り、乱獲と並んでパンダの絶滅危機の原因でもある。近年の研究によって、発情期以外でも声と匂い付けによって他のパンダと頻繁にコミュニケーションをとり、しばしば交流することが判明している。
クマ科の気性
外見や動作の特徴は人間にとって「愛らしさ」と映り、そのような面が注目を集めるが、クマ科動物として気性の荒い一面も併せ持っている。動物園の飼育員や見学客などが襲われる事件が、過去には何件か発生している。
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