「ハ(8)ム(6)」の語呂合わせ。まだ狩猟が盛んだった時代に、肉を塩漬けすることで長く保存ができることを古代の人が知ったのが、ハムやソーセージのはじまりといわれている。日本にハムの製造技術が伝わったのは、19世紀の後半であった。ハムはかつて高級食材であったが1960年(昭和35年)頃には一般家庭の食卓にのぼりはじめ、今ではすっかり日本の食文化に欠かせないものになっている。
ハムの種類
ハムは豚もも肉を塩漬けにしたものという緩い定義であるため、その範疇に含まれる加工食品も多く、種類や分類法もさまざまである。
豚肉を燻煙・湯煮した製品としては、骨付きもも肉をそのまま使った「骨付きハム」、骨を抜いたもも肉を用いた「ボンレスハム」がある。
塩漬けまでの工程は共通しているが、その後の加熱や煮沸などの処理を行うものと行わないものがある。行わないものを日本では生ハムと称することが多い。逆に生ハムが一般的なスペインでは生でないハムをハモン・デ・ヨルク(ヨークハム)やハモン・コシート(煮ハム)と称して区別する。生ハムのうちでも、燻製はするが加熱しないもの(ラックスハム)、塩漬け・乾燥のみで燻製しないもの(プロシュットやハモン・セラーノなど)に分かれる。
また、塩漬けの際には追加する香辛料に地域差があり、燻製を行うものは地域によって用いる木材の種類が異なるため、それによる風味の違いも大きく、産地別に名前が付く場合も多い。シュヴァルツヴェルダー・シンケン (black forest ham) などは模倣品を含め広く知られている。中国で生産される「金華火腿」(ジンホアフオトェイ、金華ハム)などの中国ハム(火腿; huǒtuǐ、フオトェイ)も産地名で区別されるハムの一つである。中国ハムは特にカビによる風味の変化があることが特徴である。
製法
豚肉の肉塊を整形し、塩または塩水に漬け、血絞りをする。塩を肉に加えると細胞内の水分が外に出ると同時に塩が細胞に入り、腐敗の元となる微生物やカビの繁殖が抑えられる。また、肉の筋組織も塩を吸収し、タンパク質線維をほぐし肉を柔らかくしていく。古代ローマ時代のハムはこの工程の後、塩を払い乾燥させ、酢と油を塗って完成とした。次に、食塩、香辛料や調味料を加える(塩せき)。発色剤である亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩や食品添加物を加える場合はこの段階で行う。16 – 17世紀には硝酸カリウム(ソルトピーター)を加えると肉の色が鮮やかになり、同時に風味が増して保存期間も伸びることが知られるようになった。更に研究が進み、亜硝酸塩に取って代わったのは20世紀のことである。欧州で一般的に使われる岩塩には亜硝酸塩が含有されており、長期熟成させる手法で作られる伝統的なハムなど食品添加物として亜硝酸塩を添加しない場合でも同じ効果が得られる。
ハムは今日では保存食としての色合いは薄くなり、工業製品としてのハムは、伝統的なハムほどの複雑な風味はないが、ハム特有の風味をつけた肉加工食品となっている。回転ドラムで肉を成形し、塩漬けの工程を冷蔵、加熱調理に替え、熟成の工程は塩水や大豆たんぱく等の注入やスライスした後に塩水につけるなど、非常に短時間で完成する。伝統的なハムと比較して工業製品のハムは水分量が多く、含まれる塩分は1/2程度となる。
塩漬け、熟成したあと骨付きハム、ラックスハムはそのまま燻煙する。その他の種類のものは加熱してから風味程度に燻煙する。そして湯煮を行う。近年は燻製による発がん性が指摘されており、保存法としてというより香りをつけるために行われる。肉の燻製法には熱い煙で燻す高温法と、釜で起こした煙をパイプなどを通して冷ました煙で燻す低温法の2種類があり、高温法は簡単な施設ででき殺菌効果が高いが肉が乾燥し硬くなる欠点があり、低温法は煙の成分が高温法に比べ7倍も早く付着する上に肉質に影響は与えないが、そのための設備が必要である。
骨付きのハムのような、元の肉をそのまま加工したものは、当然ながら元の肉と同じ形状になる。
食べ方
風味のよいものはサラダ、サンドイッチ、オードブルなど火を通さずに食べる。
焼いてハムエッグやオムレツ、フライなどにもする。厚めに切ってハムステーキ、ハムカツにもする。
また、ハムは塩味があり濃厚なうまみもあることから、スープのだしとしての用途など、調味料に近い用いられ方をすることがある。これは煮沸処理や塩抜き処理を行わないハムで特に顕著である。中国ハムは塩味が強いので生食に用いる事はほとんどなく、主に鶏肉などと合わせて出汁を取るのに用いるか、魚や白菜などの野菜と共に蒸して、味付けに使われることがもっぱらである。調味料に近い使い方はハム以外の加工肉でも行われ、ベーコン、パンチェッタ、グアンチャーレはこの傾向が強い。
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