1980(昭和55)年5月24日(現地時間:5月23日)、黒澤明監督作品『影武者』が、第33回カンヌ国際映画祭でグランプリ作品に贈られるパルム・ドールを受賞しました。
映画『影武者』は、戦国武将にまつわるエピソードを取り上げたスペクタクル巨編で、主演は仲代達矢氏でした。また、外国版プロデューサーとして、
- フランシス・フォード・コッポラ氏
- ジョージ・ルーカス氏
らも参加しており、国内外で高い評価を得た映画となりました。
『影武者』
黒澤が『デルス・ウザーラ』以来5年ぶりに撮った映画で、久しぶりの時代劇となった。彼の作品では唯一、実在の戦国武将にまつわるエピソードを取り上げたスペクタクル巨編で、戦国時代に小泥棒が武田信玄の影武者として生きる運命を背負わされた悲喜劇を描く。
天正元年、その勇猛を恐れられる武田信玄とその軍勢は、東三河で野田城を攻め落とそうとしていたが、ある夜、信玄は城内から狙撃され、上洛の野望叶わずして死す。自己の死は秘匿し、幼い嫡孫(竹丸)が成長するまで3年は動かずに領地を固めてほしい、との遺言を託された信玄の弟・武田信廉と重臣らは、信玄の死を内部にも明かさず、死刑寸前のところを信廉が拾ってきた、信玄に瓜二つの盗人を、信玄の影武者として立てることとする。盗人は盗み癖を見せて逃げようとしたため一度は解任されるものの、信玄が死んだこと、かつその死が織田信長や徳川家康の間者にばれたところを目撃すると、以前対面した折に受けた信玄の威厳や、助命の恩義を思い出し、自ら影武者になることを重臣たちに土下座して願い出る。
信玄として屋敷へ戻った影武者は、嫡孫竹丸や側室たちとの対面を危ないところを見せながらも果たし、やがては評定の場においても信玄らしく振舞って収めるなど、予想以上の働きを見せていく。しかし信玄の存命を疑う織田信長や徳川家康は、陽動作戦を展開しだす。それに対し諏訪勝頼は独断で出陣し、武田家内には不協和音がもたらされる。勝頼は側室の子ゆえ嫡男とはみなされず、自身の子、竹丸の後見人とされており、かつ、芝居とはいえ下賤の身である影武者にかしずいて見せねばならぬなど憤懣やる方なかった。
しかしある日、影武者は信玄の愛馬から振り落とされ、川中島で上杉謙信につけられた傷がないことを側室に見られてしまい、ついにお役御免となる。重臣らはやむを得ず、勝頼を武田家の総領とすることを決定するが、功にはやる勝頼は重臣たちの制止を振りきり、長篠で、織田・徳川の連合軍と相対する。三段構えの敵鉄砲隊の前に武田騎馬軍の屍が広がる中、影武者だった男は、槍を拾い上げ、ひとり敵へと突進していく。
戦が終わり、男は致命傷を負いながらも死屍累々の戦場の中を徘徊し、喉を潤すべく河に辿り着いた所で河底に沈む風林火山の御旗を見つけ、駆け寄ろうとして力尽き斃れ、その屍が河に流される所で物語の幕は下りる。
影武者 KAGEMUSHA 黒澤明 Akira Kurosawa