そもそも免疫ってどんな仕組みなの?
まずは免疫の仕組みについて知ることが大切です。免疫とは細菌やウイルスから体を守ってくれる防御システムと言われています。
免疫には自己免疫と獲得免疫の2種類があります。
自己免疫とは、身体の中に細菌やウイルスといった病原体が侵入すると、その侵入してきた病原体に対してそれに対抗できるように自分を守るものを作って攻撃をします。この病原体のことを抗原と言い、それに対して対抗するものを抗体といいます。このサイクルによって自然に免疫を獲得できることを自己免疫と言います。
一方、獲得免疫とは同じ種類の抗原がもう一度体内に侵入してきた場合に、すでに記憶されている免疫が活性化されて侵入してきた抗原を攻撃して追い払うシステムのことを言います。例えば麻疹や風疹など一度かかると二度とかからないといわれる感染症はこの獲得免疫の働きによって感染しないのです。
免疫力が下がる原因にはなにか?
免疫力が低下する原因は多岐にわたります。免疫力が低下する最もハイリスクな方が高齢者、乳幼児、妊婦です。特に高齢者は加齢に伴い、免疫細胞が低下したり新しく作られた免疫細胞の機能が低下したりするため、免疫力が落ちます。年を重ねると風邪をひきやすくなるのもこの加齢による免疫機能の低下が原因とされています。
また強いストレスは自律神経のバランスを崩し、免疫力の低下につながるといわれています。睡眠時間も同様に免疫力低下につながる原因とされており、とある調査によると7時間未満の睡眠時間の人は、8時間以上の人に比べて約3倍風邪にかかりやすかったという結果が出ており、睡眠は免疫力低下に関係しているということが分かっています。他にも健康な方の免疫力が低下する理由として食生活の偏りや生活時間の乱れ、疲労、運動不足、喫煙、ストレス、過度の飲酒が挙げられています。
免疫力を高める6つのヒント
1. 適度な運動をする。
まずは1日に10分程度の体操をするだけでもよいですから、運動の習慣をつけることが大切です。可能ならば、うっすらと汗をかく程度の時間、散歩ができるとよいでしょう。
運動は免疫機能を向上させる他にも、生活習慣病を予防したり、転倒を防いだり、脳を活性化させ るなどの効果があります。
適度な運動をする人は風邪をひきにくい
2. バランスの良い食事の摂取
免疫機能を維持するためには、良質なタンパク賃、ビタミン、ミネラルが必要です。脂肪や糖分ばかりが多くなりがちな洋食に比べて、和食は栄養バランスがよくおすすめです。
例えば、全粒穀物摂取量と疾患リスクについて45報の論文を解析したところ、1日当たり全粒穀物を90g(パン2枚とシリアル1皿相当)以上摂取すると、摂取しない場合に比べて感染症やがん、心疾患などの発症リスクが低下しました。また、200人の医療従事者を緑茶成分(1日あたりカテキン378mg、テアニン210mgを含む)を摂取する群、偽薬をのむ群に分けて比較した研究では、緑茶成分を摂取した群では偽薬をのむ群と比較してインフルエンザ発症率が有意に低下しました。乳酸菌食品やメカブなどでも報告があります。
3. ぐっすりと良く眠る。
夜にきちんと眠れば、昼間はすっきり起きて動けるようになります。昼は交感神経が、夜は副交感神経が優位に働くという自然な切り替えをするためにも、睡眠のリズムを確保することが重要です。
4. よく笑う。
笑うと副交感神経が優位に働きます。また、NK細胞という、免疫をつかさどる細胞が活性化されることが分かっています。たとえ作り笑いでもそのような効果がみられます。
10人の男女(平均年齢22.9歳)を対象に、コメディアンによるユーモラスな映像を見た場合と教訓的なビデオテープを見た場合とで、唾液中のIgA濃度を比較したところ、教訓的なビデオの後のIgA濃度は変化なしでしたが、ユーモラスな映像を見た後のIgA濃度は有意に上昇。日々の笑いは、免疫を高めてくれそうです。
5. 体を温める。
体温が高いとリンパ球が増えて活性化し、免疫機能が高まります。また、身体が温まると血管が拡張して副交感神経が優位になり、リラックスしやすくなります。
入浴はぬるめのお湯でゆっくりと。40度くらいのお風呂に10分以上つかるとよいでしょう。シャワーだけでは身体が温まらず、交感神経が刺激されるため、あまりリラックスできません。
お腹や腰が冷えているリンパ球減少症の男女6人(28~70歳)が、睡眠中や日中に湯たんぽで胴体や四肢を温めたところ、免疫を上げるリンパ球が大幅に増加しました。汗をかかない程度に体をほどよく温めるには、湯たんぽもお薦めです。身体を温める食べ物もあります。根菜類、イモ類、しょうがなど、土の中にできるものは身体を温める作用があるといわれます。
6. リラックスできる時間を作る。
仕事が忙しく、いつも帰りが遅い人は、なかなかゆったりとした時間がもてません。さらに、多忙はストレスから暴飲暴食を招きやすいものです。仕事を早めに切り上げ、30分だけでも早く帰れるようにしてみましょう。
また、責任感が強くまじめな人は、ついがんばりすぎて無理をしてしまうことが多々あります。適度に「手を抜く」ことも、時には必要かもしれません。
59人の健康な男性(18~30歳)に免疫刺激のためのワクチンまたは生理食塩水を投与し、30分間休養または心理ストレスを与える作業を行う群に分けました。その結果、楽観的思考の人は、心理ストレスにさらされても、ワクチンの抗体価が高まっていました。
不規則な生活や過度のストレスなどは人間の免疫力を下げてしまいます。以上の6つのヒントを参考に健康的な生活を送りましょう。