2001(平成13)年10月23日、Appleが携帯音楽プレーヤー
iPod
を発表しました。
数百曲を手の中に持ち歩くことを可能にしたデジタルオーディオプレーヤーの登場は、それまで一般的だったCDやMDプレーヤーとは一線を画し、
- プレーヤーの小型化
- 聞ける曲数の大幅アップ
- 音楽のデジタルメディア化
- 新感覚の操作性
など、独自の路線を展開し大きな話題を呼びました。
中でも、CDやMDといった「ディスク(カセット)」を必要とせず、
iTunes
と命名されたメディアライブラリの中に楽曲を取り込むPCありきのスタンス
は、他のデジタル音楽プレイヤーとも大きく異なる特徴でした。
主にパソコンのOS開発、販売を行っていたApple社から発表されたiPodは、世界中で瞬く間に大ヒットを記録。デジタルメディアの先駆けとして大きな役割を果たしたと目されております。
アップル、iPodを発表
アップルのiPod発表のプレスリリース
1,000曲をポケットに入れて持ち運べる超小型MP3プレーヤー
2001年10月24日—アップルは本日、最高1,000曲の音楽をCD品質のままポケットに入れて持ち運べる約185グラムの超小型MP3プレーヤー、「iPod™(アイポッド)」を発表しました。iPodは、アップルの伝説的とも言える使いやすさと、Auto-Sync(オートシンク)機能を組み合わせたポータブルミュージックデバイスとして先進的な設計です。Auto-Sync機能により、iPodをMac®に接続すると、すべてのiTunes™(アイチューンズ)の登録曲とプレイリストが自動的にiPodにダウンロードされ、常に最新の状態に保たれます。「アップルは、iPodにより、自分の音楽コレクションを全部ポケットに入れて持ち運び、どこででも聞くことができるというまったく新しいカテゴリーのデジタルミュージックプレーヤーを発明しました。iPodは音楽を聞くという行為をまったく違った経験に変えてしまいます。」と、アップルのCEO(最高経営責任者)、スティーブ・ジョブズは語っています。
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次世代プレーヤー
iPodは、内蔵ハードディスクに音楽を保存するという次世代のポータブルミュージックプレーヤーです。現在市販のハードディスク型のプレーヤーのわずか20パーセントの大きさしかありません。iPodは5GBの超薄型ハードディスクに最高1,000曲までのCD品質の音楽を保存することができるほか、衝撃から最長20分まで音飛びを防ぐスキッププロテクションを備えており、走ったり、自転車に乗ったりするなどしながらノンストップで再生することができます。iPodはまたFireWire®(ファイヤーワイヤ)ポートを内蔵しており、CD1枚の音楽を10秒以内で、1,000曲を10分以下でダウンロードできます。これは、USBベースのプレーヤーの30倍以上の速さです。iPodは充電可能なリチウムポリマーバッテリーを採用し、最高10時間の連続再生が可能です。iPodがMacに接続されている時には、自動的にFireWireケーブルを通じて充電されます。iPodにはコンパクトで持ち運びに便利なFireWireベースの電源アダプタが付属しています。iPodの大容量5GBのハードディスクは持ち運び可能なFireWireハードディスクとしても使うことができ、プレゼンテーションや大きな容量の文書、画像、デジタルムービーなどを保存するこができます。iPodは一般的なMP3、MP3 VBR(可変ビットレート)、AIFFおよびWAVフォーマットの音楽が再生でき、最高320KbpsまでのMP3ビットレートをサポートします。ファームウェアはアップグレード可能で、将来のオーディオフォーマットにも対応できます。CD品質の音楽再生のために、iPodには20から20,000Hzの周波数帯域にわたり深みのある低音から澄み切った高音まで美しく再生できる高出力60mWのアンプが内蔵されています。iPodのインナーイヤー型ヘッドフォンはネオジウム磁石を使用しており、優れた周波数特性とハイファイサウンドを可能にしています。iPodには、また白色LEDによるバックライトを備えた160×128ピクセル高解像度ディスプレイが付いており、昼光においても薄暗い場所でもはっきりと見ることができます。
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iPodシリーズの歴史
最初のiPodはマッキントッシュ専用のデジタルオーディオプレーヤーとして2001年10月23日に発表され、2002年発売の第2世代でWindowsにも対応した。「iTunesのライブラリに収めた音楽を外へ持ち出す」というコンセプトで開発されており「まずiTunesありき」である点が、先行していた他のデジタル音楽プレイヤーとははっきり異なる。これはiPod発表時の惹句「iTunes to go」によく現れている。この惹句はiBook発表時の「iMac to go」にかけたもの。日本では「Goodbye MD」という惹句でミニディスク市場からの占有率獲得を目指した。iPodはiTunesとの同期機能を備えることにより、自宅での環境をそのまま外へ持ち出すというコンセプトをより鮮明にした。
発売された初期の頃は電池の消耗・劣化が激しく、更に電池の交換費用が高額だった(購入後、僅か90日間の製品保証だった)ために、米国では購入者から電池交換費用を安くするよう運動やデモを起こされ、集団訴訟にまで発展した。この訴訟でアップル社が応じた和解の条件は以下の通りである。2004年5月31日までに第3世代までのiPodを米国で購入した米国の居住者に対して、バッテリの無償交換もしくは50ドルの商品券を渡すこと、あるいはその期間までにiPodの電池交換を有償で受けた購入者には最大で50パーセントの有償交換金額の返金に応じる、の2点である。また、イギリスの国会でもiPodの電池劣化問題が話題となったが、2004年6月以降からは電池も改良され、更にサポートとしてAppleCare Protection Planが発売されて解決している。2005年10月14日には、電池交換サービスの料金が従来の15,750円から半額以下の6800円に改訂された。
iPodの新製品は発表直後に発売開始されるため、初期出荷数と需要のバランスが悪く、人気が集中する発売から数か月は購入が難しくなる状況に陥る場合が多かった。iPod miniやiPod shuffleの場合がそれに該当し、店舗で入手困難な状況が数ヶ月間は続いた。
iPodが普及する要因になったのは、使いやすいUIとシンプルなデザインもあるが、多くのユーザによるネット上でのトラブルシューティングの多さが、iPodをデジタル音楽プレイヤーのスタンダードの地位に押し上げ、今なおiPodユーザを増やしている。そのため、2007年現在日本の総売上の約5割がiPodシリーズである。米国では8割近い。
日本ではiPodが2003年に、iPod miniが2004年に、更にiPod shuffleが2005年に揃ってグッドデザイン賞を受賞した。ちなみにiPod miniが金賞を、iPod shuffleはグッドデザイン賞ベスト15に選ばれた。更にロジクール社が出したiPod用のワイヤレスヘッドホンも同様に2005年グッドデザイン賞に選出された。
2005年10月12日、動画の再生に対応した第5世代のiPodが発表され、同時に動画転送のためのツールであるiTunes 6を発表した。
また、2006年1月11日に「iPod Radio Remote」という名でサードパーティからは既に発売され、以降も公式な対応が求められていたFMラジオチューナー機能付きのワイヤードリモコンが発表され、第5世代以降発表のshuffleを除くモデルでのラジオ受信が可能となった。また、ファームウェア上ではRadio Data Systemを標準に準拠したデータが送られ、ラジオ局の情報や聞いている曲、ミュージシャンの名前などの情報が表示される仕様となっている。北米などを中心にRDSは既に開始されているものの、日本のFMラジオ放送ではこのRDSを送信しておらず、現在は特に何も表示されない。また、日本の見えるラジオなどのFM文字多重放送には対応していない。第5世代発表から11か月後の2006年9月12日にはマイナーチェンジが行われ、新たに80GBモデルが投入された。主な改良点は液晶ディスプレイの高輝度化(従来比160%)、動画再生機能の強化、iTunes Storeからのゲームダウンロードに対応、等。同時に映画コンテンツ(2006年9月現在日本では開始されていない)・5GiPod向けゲームのダウンロードに対応したiTunes 7が発表された。なお、この際第1世代iPodからリクエストされてきたギャップレス再生機能をサポート。
2007年2月8日、アメリカ合衆国ニューヨーク州のカール・クルーガー上院議員がiPodなどの電子機器を操作しながら横断歩道を渡ることを禁じる法案を同州議会に提出した。同州ではiPodなどの電子機器を操作しながら横断歩道を歩いていた住民が車に轢かれ死亡する事件が3件発生し、そのうち1件は「危ない」と叫んでいたのにもかかわらず気付かずに轢かれて死亡した。
2014年9月10日に開かれたAppleスペシャルイベントの終了後、公式サイトのアップルストアでのiPod classicの取り扱いがなくなり、各メディアにおいて販売が終了したことが報道された。これにより2001年から続いた特徴的なスクロールホイールを搭載した全てのiPodがラインナップから姿を消したこととなる。
スティーブジョブズによるiPodプレゼン(2001)
初代iPod CM