1928年(昭和3年)のこの日、アメリカ・ニューヨークのコロニー劇場でミッキーマウスが登場する短編アニメーション『蒸気船ウィリー』(原題:Steamboat Willie)が初めて公開された。
上映時間は約7分で、ディズニーのトレードマークともいえるミッキーマウスが登場した記念すべき日となった。11月18日は作品の公開日であり、誕生日とは呼ばず、単に「スクリーンデビューの日」と呼ぶ場合もある。
ミッキーマウスについて
ミッキーマウス(Mickey Mouse)は、ウォルト・ディズニー(Walt Disney、1901~1966年)が天井裏でアイディアを練っているときに現れたネズミがモデルとなっている。もともとは「モーティマーマウス」と名付けるつもりだったが、妻リリアンの一声で現在の名前になった。
その代わりにミッキーの恋のライバルであり、ミニーマウス(Minnie Mouse)の幼なじみとして、モーティマー・マウス(Mortimer Mouse)が登場する。ミッキーマウスの恋人はミニーマウス。愛犬はプルート(Pluto)。甥っ子にモーティーとフェルディーがいる。
ミッキーマウスのプロフィールは以下の通り。生年月日:1928年(昭和3年)11月18日(日)、ニューヨーク出身、年齢:設定ではティーンエイジャー、種類:白ハツカネズミ、身長:3フィート2インチ(約96.5cm)、体重:23ポンド(約10.4kg)、趣味:スポーツ・カントリーライフ・読書。アメリカなどではあだ名「Mick」(ミック)とよく呼ばれている。
関連する記念日として、6月9日はドナルドダックが映画『かしこいメンドリ』でスクリーンデビューした日に由来して「ドナルドダックの誕生日」となっている。
蒸気船ウィリー
世界初のトーキー・アニメーション、つまり音声つきのアニメーション作品であるという評価がなされることが多いが、正確にはこれは間違いである。この作品以前にマックス・フライシャーが経営していたインクウェル・スタジオの『ソング・カー・テューンズ(Song Car-Tunes、1924年 – 27年)(全36作品中19作品がトーキー)』ポール・テリーの『ディナー・タイム(Dinner Time、1928年)』などが既に音声つきアニメーションとして制作されている。『蒸気船ウィリー』の価値は、サウンドトラック方式を世界で初めて採用したところにある。
一般的には、この作品がミッキーマウスとミニーマウスのデビュー作とされているため、公開日の11月18日はミッキーとミニーの誕生日、もしくはスクリーンデビューの日となっている。厳密には本作の前に作られた『プレーン・クレイジー』と『ギャロッピン・ガウチョ』に出演しているが、公開は本作が最初だった。
ウォルト・ディズニーは『オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット』の版権をユニバーサル映画に奪われてから、信頼するアニメーターであったアブ・アイワークスと共に新たなキャラクター、ミッキーマウスを考案した。当時の主流はサイレント映画であり、ミッキーを主役にしたサイレント映画を数本作ったが、配給会社には受け入れられなかった。しかし1927年に世界初のトーキー映画である『ジャズ・シンガー』が公開され、トーキーがこれからの主流になっていくと確信したウォルトはアニメでもトーキーを利用できないかと考え、当時サイレント映画用に作っていた『蒸気船ウィリー』をトーキー映画として作り直す。ニューヨークのコロニー・シアター(現:ブロードウェイ・シアター)で公開された本作はまさに大成功を喫し、その後のディズニーの基盤となった。ミッキーは裸足で素手だったものが、この映画の中で靴を履いている。
配給業者さがしに難航した本作であるが、封切られてからはプレスや観客の評判を呼び、映像と音声を完璧にシンクロさせた画期的・独創的な手法が評価された。
劇中のミッキーやミニー、ピートなど全ての声をウォルト自身が演じている。タイトルと内容は喜劇俳優バスター・キートンの『キートンの蒸気船』(Steamboat Bill Jr.)のパロディである。
2007年公開の長編作品『ルイスと未来泥棒』以降、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ制作のアニメーション作品のオープニングロゴタイトルとして、本作の1カットを使ったものが新たに製作、使用されている。
あらすじ
とある貨物の蒸気船。ミッキーはいつものように口笛を吹きながら機嫌よく船を操縦していたが、船長のピートに許可なく勝手に操縦していたため叱られてしまう。
港に着いた船は牛や七面鳥と言った家畜をミッキーの手伝いでクレーンを使って積み込んで出港するが、遅れてやってきたミッキーの恋人・ミニーが置いてけぼりを食らう。ミッキーはクレーンを操作してなんとか彼女を救い上げるものの、その時彼女が持っていた楽譜や楽器が床に散らばり、全部山羊に食べられてしまう。ところが不思議なことに、山羊はそれを食べたせいかオルゴールに変身する。そこでミニーが尻尾を回すと、わらの中の七面鳥が流れだす。楽しくなってきたミッキーはバケツやスプーン、果ては猫や七面鳥、豚、牛まで楽器代わりにして大騒ぎする。
しかし調子に乗りすぎて、またしてもピートに叱られ、今度は罰として夕食の料理に使うジャガイモの皮をむく羽目となる。船窓からその無様な様子を見たオウムはミッキーを嘲笑う。腹が立ったミッキーはジャガイモをオウムに投げつけて外に突き落とし、その声を聞いて満足げに笑うのだった。
「セレブレーション!ミッキーマウス」 蒸気船ウィリー