1970年(昭和45年)の7月18日、東京都杉並区で日本初の光化学スモッグが発生した。
立正高校で体育授業中の生徒が突然目の痛みや頭痛などを訴えて倒れ、43人が病院へ運ばれた。また、東京一円でも多くの人が目やのどの痛みを訴えた。東京都公害研究所は、車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)や炭化水素が日光に含まれる紫外線によって有毒な物質に変化して起こる光化学スモッグであると推定した。これ以来、車の排ガス規制が行われ、晴れた日には光化学スモッグ注意報が発令されるようになった。
スモッグ(smog)は、煙のスモーク(smoke)と霧のフォッグ(fog)からの合成語。大気中に大気汚染物質が浮遊しているため、周囲の見通しが低下している状態をいう。
光化学スモッグ
東京都の調査によって光化学オキシダントによるものということが判明して以来、公に注目されるようになった。ただし、1965年頃に近畿や四国で、1969年・1970年に関東でそれぞれ報告されていた農作物の斑点などの被害が、後に光化学スモッグによるものであったと判明しているように、それ以前にも被害はあったと考えられる。
1970年の初報告以来、日本国内では光化学スモッグが多数報告されるようになった。光化学スモッグ注意報などの発表延べ日数は、1973年(昭和48年)に300日を超えてピークに達している。その後減少し、1984年(昭和59年)には100日以下となる。しかし、再び増加して1980年代後半以降は100-200日前後を推移し、2000年と2007年には200日を超えている。光化学オキシダントの濃度も、2006年から2010年の5年間で環境基準を達成している地点は0.2-0%とほとんどなく、平成24年の環境白書でも「依然として低い水準」とされている。また2000年前後から、対馬などの離島や西日本、日本海側などで大陸(主に中国)から越境輸送された汚染物質が影響したと推定される光化学オキシダントの高濃度事例が発生して問題となっている。2002年には千葉県で国内で18年ぶり(千葉県内では28年ぶり)となる光化学スモッグ警報が発表されている。