3月29日今日は何の日?:マリモの日
1952年(昭和27年)のこの日、北海道・阿寒湖のマリモが国の特別天然記念物に指定された。
同時に、富山湾のホタルイカ群遊海面、鹿児島県出水市のナベヅル、高知県のオナガドリなども国の特別天然記念物に指定された。
マリモ(毬藻、学名:Aegagropila linnaei)は
マリモは球状の集合体を形成するが、球状体一つがマリモの一個体単位というわけではなく、この球状体を構成する細い繊維(糸状体と呼ぶ)がマリモの個体としての単位である。よく目にする球状の「マリモ」は、生物学的にはマリモの“集合体”である。多くの生息地では、マリモは糸状体の形態で暮らし、球状の集合体を作らない。見た目は柔らかそうであるが実際には硬い藻であり、手で触れるとチクチクとした感触がある。
日本では、北海道の先住民族・アイヌはかつてよりマリモの存在は知っていたが、食料になるわけでもなく、湖にたくさん生息しており、かつては湖面に漂ったり、時化のあと湖岸に大量に打ち上げられたりして、珍しいものでもなんでもなかった。アイヌ語で「トラサンペ(湖の化け物)」と呼んだりもした。
学術的には、1897年に札幌農学校(現北海道大学)の川上瀧彌が阿寒湖の尻駒別湾で発見し、その形から「マリモ(毬藻)」という和名をつけた。
なお、富士五湖ににもマリモ(フジマリモ)が生息しているが、これは1956年に発見されたものである。その他、東北や北陸地方、琵琶湖などで、本州各地で生息が確認されているが、日本で学術的にマリモの存在が確認されたのは、阿寒湖のマリモが一番先で、もっとも有名である。
なおカール・フォン・リンネがスウェーデンのダンネモーラ湖からマリモを採取し学名をつけたのは1753年である。
生態
マリモは基本的に淡水で生きるが、海水と淡水の混ざった汽水域でも生育が確認されている。
淡水産藻類としては耐冷性と耐暗性も非常に強く、淡水と共に凍結した場合、-20°Cで一日程度の凍結であれば耐えることができ、阿寒湖は真冬になると完全に結氷し、60cmの厚さにもなる氷の下にマリモは閉じ込められるので、冷蔵庫で凍結させず数か月保管しても死滅はしない。逆に暑さに非常に弱く、35℃が限界である。そのため、販売されているマリモを購入した場合、夏場の対策として冷蔵庫での保管が良いと考えられる。
マリモは一般的に水に浮かないものといわれているが、水に浮かんだ個体が阿寒湖で発見された(2005年)。マリモは光合成により気泡(酸素)を発生するため、販売されるマリモでも光合成が活発なときにまれに浮くときがある。
水質の悪化に弱いことが生息数の減少を引き起こしているとされている。特にカチオン系界面活性剤に弱い。乾燥にも弱く強風や遊覧船の波浪により打ち上げられると容易に枯死する。泥に埋もれたり、シオグサに覆われるなどして光合成が阻害されても枯死するが、波浪による回転によってそれらを表面から落としている。この回転運動によって他のマリモの下に隠されたマリモが表に出ることがあり、これによって群生地全体の各個体が光合成を行えている。
阿寒湖のマリモは波浪により揺すられ球状になる。30cmほどのサイズまで生長するとより波の影響を受けやすくなり、嵐などによる強風によって湖岸に打ち上げられる。従来、打ち上げられることはマリモの生長にマイナスだと考えられていたが、打ち上げられたマリモはバラバラになり、その破片をもとにまた球状マリモへと生長することが分かった。打ち上げられること自体はマリモにとって数を増やすために必要なことであった。
分類
記載当初マリモ属 Aegagropilaに分類されたが、その後シオグサ属Cladophoraに分類される。1990年代以降、分子生物学的なアプローチによりシオグサ属とは異なることが分かり、再びマリモ属に戻った。
チシママリモ、フトヒメマリモ、カラフトマリモ、トロマリモ、フジマリモ等の近縁種があるとされていたが、これも分子生物学的な手法を用い解析した結果、すべてマリモと同じ種であることが確認された。近縁種に富山県で発見され、北海道から九州まで全国で確認されているタテヤママリモという種がいる。
越冬のマリモ引き揚げ 北海道・阿寒湖